試験ではなく、ソフトウェア開発手法の未熟さを責めよ
私は試験を実務につなげる努力より、ソフトウェアの開発手法を確立することの方が大切と考えます。試験が実務に必要とされていないのは、資格化されていないことも一つの原因でしょう。しかし、それ以前にソフトウェアの開発手法が確立されていないことの方が問題ではないかと思います。試験のことを｢使えない｣と一括してしまうのは簡単です。しかし、その前にまず試験でもある程度技能が図れるような業界標準がないことを恥ずべきではないでしょうか。
情報処理技術者試験の価値
ITproより：
情報処理技術者試験は，存在価値がなくなったのか？：ITpro
ところで，この情報処理技術者試験が，今，大きな転換期を迎えている。受験応募者数が激減しているのだ。2002年には80万人を超えていた応募者数も，今期の試験シーズンが完了した2006年は60万人と，ピーク時の4分の3以下にまで落ち込んでしまった。
私が情報処理技術者試験を受験したのは、もう20年以上も前のことなので、以下に述べることは、現在の実情には合っていないであろうことを、あらかじめお断りしておきます。もし間違いや現状をご存じの方がいましたら指摘いただけると嬉しいです。
20年前
この試験を受験したのは、まだ社会人になって間もない頃。しかし試験問題を見て思ったものです。｢こんな知識、今じゃ役に立たない｣と。実物は見たこともない磁気ドラム。見たことはあるけど骨董品だった紙テープ。当時普及していた構造化プログラミングは出題されていない。そんな雰囲気の試験問題でした。
もちろんコンピュータの基礎知識であるとかアルゴリズムなど、当時に通用する問題もありましたが、問題を見た印象は明らかに実業務とかけ離れているということでした。にもかかわらずこのような試験を受けていたのは、企業から奨励金のようなものが支給されていたからです。情報処理試験の資格の数が企業にとって有益だったのでしょうか。
｢資格は得られるけど実務の役には立たない｣それが当時の認識だったと思います。
現在の試験
あれから20年以上。現在の情報処理技術者試験はどうなっているか、ちょっと見てみました。
試験内容もだいぶ変わったようですね。私の時代には「プロジェクトマネージャ試験」などというものはありませんでした。時代に合わせて、試験自体もいろいろと見直しがなされていたことが分かります。Cだけでなく、今風にJavaも選べるようになっているようですね。：）
しかしながら根本的な問題であると思われる以下については、それほど進展がないようです。
現役のプロジェクトマネージャが必ず，「プロジェクトマネージャ試験」に合格できるわけではない。合格するには，知識を整理するための受験勉強の時間を日々の業務とは別に割く必要がある。
国家試験でありながら実務をすることは出来る。これが情報処理技術者試験最大の問題であると思います。とはいえ、この世界の技術の変化は早いので、資格にしようと思っても出来ない。また、そういったシステムも構築できないというのが実情なのでしょう。合格者の感想に、直接業務に役立ったケースはほとんどないことからも、現実が分かります。
まずは業界標準の確立を
試験を実務につなげる努力も大切ですが、それ以上にソフトウェアの開発手法を確立することの方が大切ではないでしょうか。
試験は実務に必要とされていない。資格化されていないことも一つの原因でしょう。しかし私は、それ以前にソフトウェアの開発手法が確立されていないことの方が問題ではないかと思います。
言うまでもなくこの試験の目的は技術者がある一定のレベルに達しているかどうかを判定するもの。しかし現場はどうですか？ムリなスケジュールを体力と根性で乗り切る。様々な要求を巧みにさばく。原因の分からないやトラブルをとにかく解決する。技術的な知識より、経験（と根性）が重要視される開発現場の姿が浮かび上がってきます。
もちろん知識や手法だけが全てではありません。経験も重要なファクターではあると思います。しかし、経験の方が重要というのは、まだまだこの業界の開発手法が未熟であることを示しています。それに対して一般的な試験で技能を図ろうとすること事態、ムリがあると言わざると得ません。
試験のことを｢使えない｣と一括してしまうのは簡単です。しかし、その前にまず試験でもある程度技能が図れるような業界標準がないことを恥ずべきではないでしょうか。
意見･反論等ありましたら、お寄せいただけると嬉しいです。
P.S.
久々に情報処理技術者試験の試験問題を見ました。もしも今受験したら、私は100%落ちますね。＾＾；
